一人だけ年上?三人官女の役割は、お内裏様のお世話役

ひな祭りが近づくと、お店やイベント展示などでみるひな人形の七段飾り。
『立派だなぁ・・・』
『何人いるんだろう・・・』
そんな思いで眺めたことはあったけど。どこに、どのお人形が並んでいたかしら?
お殿様とお姫様の結婚式の姿を人形で表した「ひな段飾り」。
いちばん最上段に、お内裏様とお雛様がならび、二段目にならぶのが三人の女性・三人官女。
そして五人囃子や随臣・仕丁と下段にならんでゆきます。
そう、7段飾り・15人いる中でも、女性は お雛様と三人官女しかいないのです。
本来、神様に仕える巫女さんの姿である、白い衣に緋色の袴姿。
昨今はゴージャスな衣を身にまとった官女が多く見受けられます。
そして五人飾りなど、コンパクトな飾りが増えた現在でも、『人数がたくさんあった方が、華やかよね』と、初節句の品を探しに来られる方々の、視線の先にあるのが、陰の立役者・官女さんたちです。
その三人官女にも、お内裏様(主にお姫さま)のお世話をする、という役割を表現したとされます。
古来、男子禁制であった住まいのなかで、日常生活のサポートから、歌・作法などお教えする立場にあったりなど、いわば多彩で有能な女性たちで、お雛様のお世話を近くで行う存在であるために、上段に飾られます。三人官女は女雛が小さい頃からお世話をしていますので、結婚式でもサポートしたり、お酒を注いだりする役割があります。
髪型も大垂髪(おすべらかし)に結うことができるのは、お雛様と三人官女だけに許された姿です。中央の三人官女は1番年上で眉毛がなくお歯黒の「既婚者」
三人官女といっても、立っていたり、座っていたり。
よく見ると、立っている子の片足が前に出ていたり。
さらには、お顔にも違いがあることに、気が付きましたか?
左右に立っている官女は眉が描かれ、口元も白い歯です。しかし、中央に座っている官女には眉がなく、お歯黒(読み方は「おはぐろ」)といわれる化粧が施されています。これは明治ころまで続いた習慣で、既婚者もしくは年長者を意味するものです。明治初めごろまでは黒いことが美しいとされていたため、お歯黒にしていたそうです。江戸時代になるとさらに一般庶民にまでお歯黒の文化は広まり、既婚女性が歯を黒く染める習慣になったそうです。明治時代に入ると丁髷や帯刀とともにお歯黒の習慣もなくなったそうです。
一般的に関東風の飾りでは、三方(さんぽう)と呼ばれる盃の載った持ち物で飾り付けます。
饗宴で儀礼的な作法としてつかわれる三献の道具として最も格が高いので、諸々の役割も含め、年長者の座り官女が持ちます。
また、京風に飾られる官女の場合は、松竹梅の飾りの載った嶋台という小道具の持ち物を持たせます。
左右の官女役割・意味はどのようなものなのでしょう?
向かって左に立っている官女の持ち物は、提子(ひさげ)という道具を持です。
「提子」は、現在では「加えの銚子」読み方は(くわえのちょうし)との名称で呼ばれていることが多いです。
提子は蓋のない急須のような、柄のない金属の酒器です。
もう一人の未婚女性(眉がありお歯黒はしていません)、長柄の銚子を持つ官女に、注ぎ足すお酒を注ぐ役割を担います。
また、立っている官女は左右どちらに、どの官女を飾るのか、悩みますよね。
この提子を持つ官女は、飾ったときに向かって左足が出ているので、官女が並ぶ段の、向かって一番左側に立たせてあげましょう。
向かって右の官女は中央の官女へお酒を注ぐ役割
向かって右の足が前に出ている立官女には、長柄の銚子(ながえのちょうし)という持ち物を持たせます。
また、両手を握っているむすび(結び)の状態なので 両むすびの官女ともいいます。
三人飾ったときに、立っている官女は足が出ている方を外側に、並べてあげます。
右手から左手へ柄を渡し、注ぎ口が中央に向けて、持たせる小道具の持ち物で飾ります。
座り官女の盃にお酒を注ぐ役割を担います。
東玉の三人官女付きの3段飾りを一部ご紹介します。
- 三段飾り「彩花」
格子をアクセントとした屏風と段の桜の模様は刺繍仕立てです。
- 三段飾り「紫香」
三段飾り・東玉総本店人気No.1セット『紫香』。側板を組み換えることにより一段でも、二段でも、三段でもお飾りいただける、東玉オリジナル「一、二の三段」です。お殿さま、お姫さまには段織りの衣裳を使用し、高級感あるつくりになっております。屏風と段の、桜の模様は駿河蒔絵で描かれております。
- 龍村裂 三段飾り「京龍村」
衣裳は、お殿さま・お姫さま・三人官女のすべてに京都龍村美術織物を使用いたしました。伝統的で、重厚感のあるコーディネートです。
商品詳細
三人官女の役割は?木目込み人形編
ここまでは衣裳着人形の官女さんのお話をしてまいりましたが、木目込み人形においても三人官女の役割は同じです。
加えの銚子→長柄の銚子→三方へとお酒を注ぐ役割を持ちますが、
ただ、眉やお歯黒に関しては木目込み人形ではあまり見かけないのは、人形作家による創作造形の感性からくるものなのかもしれません。
- 木目込人形 ゆかり「遊燕」
晴れの日を祝う家族の風景をモチーフにしたゆかり作「遊彩シリーズ」。生まれてきたばかりの赤ちゃんを抱っこしているお殿さまの姿は、まるで「育メン」。かわいらしい赤ちゃんへの優しい眼差しはこれからのすこやかな成長と幸せなご家庭を想像させてくれます。
- 木目込人形 ゆかり十五人飾り「遊月」
「游月」は、ゆかりの発想力、現代のおひなさまです。晴れのお祝いの家族の風景がテーマです。鳥を愛でるお父さん、お花飾りを作るお母さんと三人娘(三人官女)。羽子板、コマ遊びに楽器で遊ぶ親戚の子どもたち(五人囃子の代わり)に、鯛を釣ってお祝いに駆けつけたお兄さん(右大臣左大臣の代わり)、お祝の酒盛りをする叔父さんたち(三人仕丁)。幸せな楽しい光景に笑みがこぼれます
商品詳細
木目込み人形で二人だけの親王飾りを購入し、のちに三人官女を買い足す、ということに順応に対応してくださる人形販売店もあります。収納スペースに問題がないようでしたら、大きさや価格等、問い合わせてみると、自分だけのオリジナルセットができ、また毎年の飾るワクワク感が増すことでしょう。三人官女にはそれぞれ役目を持ってお内裏様に近い場所でそれぞれの仕事をしています。飾るときにはそういう話をしながらかざってお楽しみ下さい。