別所実正の一点物の作品

2023年12月25日

五月人形の種類

別所実正の一点物の作品

阿古陀形の兜

現在の甲冑師の中で、部品工程において型に頼らず、あえて一つ一つの部品を自らの手で作り組み上げる作業にこだわり続ける甲冑師は、別所実正師の他に存在しないといっても過言ではありません。
加えて、彫金細工や兜の鉢に穴をあけ、丁寧に星(鋲)をど留めるといった手間をかけた作業を守り続けている甲冑師も他にはいないと思います。繊細でもあり壮大でもある実正の兜は 伝統的な品格が漂う 佇まいです. 兜鉢の鋲止め、鍬形の形成、兜裏の布の手縫いなど、一つ一つの小さな手仕事によって、実正の兜の壮大感がうまれてきます。

では、別所実正の技を極めた至極の一点物の作品をご紹介します。

阿古陀形 焔前立 六十二間総星兜

阿古陀形 焔前立 六十二間総星兜

六十二間矧合せ星兜で2119個の極小星を打ち、荘厳かつ繊細で勇壮に仕上がっています。
前立には勢いよく燃える炎を幾重にも重ねることで「焔」を表現しています。
「焔」の色を敢えて金箔にし、他の兜を作る際には渋く仕上げているのですが、この兜は眉庇、吹返し、錣の小札を、燃える「赤」でまとめた、武士であればこうありたいと思い製作しました。

阿古陀形 菊花前立 百間総筋兜

阿古陀形 菊花前立 百間総筋兜

矧合わせ百間の筋兜。
銅版を菊に見立て製作した前立は、銅版を菊の花の様に見えるように花弁の様々な形を作り、それを幾重にも重ね金鍍金した菊の花の下には、色が黒くてわかりにくいが茎がついており、その茎からは葉脈まで表現された五枚の葉がついた枝が五枚ついています。
素掛けの饅頭しころを浅葱威した華やかさがあり、重みを感じる兜に仕上がりました。

阿古陀形 紫陽花金物 百二間総筋兜

阿古陀形 紫陽花金物 百二間総筋兜

百二間矧合せ筋兜でこの大きさにして102辺最高の間数と自負して製作致しました。
眉庇、吹返しの金具に、銅板を紫陽花の花の形に切り出し、花びらの一つ一つに細かく彫金して金色にし、葉には葉脈の様まで彫金し銀色にし、梅雨の時期に華麗に咲く紫陽花を表現するために余すところなく付け、一層華麗に見えるように仕上げた兜です。

阿古陀形 鶴丸前立 毘沙門亀甲 六十二間総星兜

阿古陀形 鶴丸前立 毘沙門亀甲 六十二間総星兜

六十二間矧合せ星兜で1553個の極小星を打ち、荘厳かつ繊細で勇壮に製作しました。
前立の鶴丸紋は2mm厚の銅板に紋を描き羽根の間を一穴ずつ細かく糸鋸で切り取りました。
眉庇、吹返し、錣の下段小札には、細かな彫金細工を施した兜です。

阿古陀形 ヘラクレスカブト虫 六十二間総星兜

阿古陀形 ヘラクレスカブト虫 六十二間総星兜

六十二間矧合せ星兜で1768個の極小星を打ち、荘厳かつ繊細で勇壮に製作しました。
カブトムシの中で王者ともいわれる「ヘラクレスカブトムシ」を前立にしたのは、昔の兜に現代昆虫界でもてはやされているヘラクレスカブトムシを付けることで、時代の融合を意識して製作した兜です。
吹返しには、兜の好物とする「クヌギの葉」を飾り金物として付けてあります。

阿古陀形 伊多羅貝前立 六十二間総星兜

阿古陀形 鶴丸前立 毘沙門亀甲 六十二間総星兜

六十二間矧合せ星兜で1745個の極小星を打ち、荘厳かつ繊細でに製作しました。
前立に「城を守る」という縁起の伊多羅貝を置き鍬形台、吹返しには、実正が最も得意とする唐草の透し金物でまとめました。

阿古陀形 榊前立 百二間総筋兜

阿古陀形 榊前立 百二間総筋兜

百二間矧合せ筋兜でこの大きさにして102辺最高の間数と自負して製作致しました。
前立にはお榊を立て、神の力を獲て、身の安全を袖に祈願するという、そんな心情で製作した兜です。
榊の葉も細かく再現されており、それぞれが違う角度で曲がっており、葉の回りも細かくギザギザに切り込んであります。

阿古陀形 重ね亀甲輪彫金 百二間総筋兜

阿古陀形 重ね亀甲輪彫金 百二間総筋兜

百二間矧合せ筋兜でこの大きさにして102辺最高の間数と自負して製作致しました。
「重ね亀甲輪」の模様を銅板に描き彫金を施してあるのですが、機械で打ち出せば簡単でも、手で作り上げるというのは、大変難しく一箇所でも間違えてしまうと違和感がおきてしまいます。
細部に至るまで細かな作業を施した兜です。
逸品物兜ですので、型など存在せず、鍬形台は彫金した後に手作業で糸鋸を用い切り出し、眉庇、吹返しに至っては彫金細工を施してあります。
黒と金の色合いで出来ている甲冑(兜)が多い中、この作品では金覆輪付きの眉庇、吹返しにしてあります。

型変り兜

戦国時代から江戸時代にかけて、流行したおもしろい形をした兜。
(神仏、気象、縁起、威し等)戦に臨む武士の覚悟、信心、はったり、を甲冑の前立に込めた、武将達の心意気を感じ、このシリーズを製作致しました。

昔の兜は張懸けで作ったものが多々ありますが、実正の作品は銅板、真鍮版を素材とし、打ち出し、彫金、糸鋸を基本作業とし、秘湯秘湯の作品を丁寧に最小化して作り上げました。

変り兜 銀箔押 鯰尾形兜

銀箔押 鯰尾形兜(斜)

昔から「大地を揺るがす」と伝えられている鯰を象った兜で、銅板を打ち出し、銀箔をおした仕上げにしてあります。
銀箔は年月が経つにつれ変色していくことで重厚さが増すようになっています。
武将、蒲生氏郷の兜として伝わっている錣は日根野錣五段で、芥子色絲素掛け威で威してあります。
蒲生氏郷の兜よりも細かな作りで「ひれ」を脇立の様な施しになっております。

変り兜 銀箔押 兎形兜

変り兜 銀箔押 兎形兜

兎の全身を鉢とし、長い耳は鍬形を意識して長めに作ったものと思われます。
現存する兜には、張懸兜(和紙を型に張り、漆で固める技法)ですが、この兜は全て銅板を打ち出して作り上げました。
錣の上四段は黒塗装で五段目は金箔押しで洒落た仕上がりになっています。
実在する兜では千葉県大多喜城に似た兜があり、形は違えど上杉謙信所用の兜にも兎耳形兜という兜が存在します。

変り兜 茄子形兜

変り兜 茄子形兜

茄子を用いたのは茄子の読みが「なす」ということから、「成す」という言葉をかけて物事が万事全て成すという意味をとらえて製作された物と思われます。
鉢は真鍮板を打ち出し、へたの部分は銅板で打ち出し、食物の茄子そのものの形をしています。
吹返しにも打ち出しの技法が使われています。
前立ては九曜紋を金箔押してあります。

変り兜 一ノ谷 馬藺之兜

変り兜 一ノ谷 馬藺之兜

太閤豊臣秀吉の兜と知られる、一ノ谷 馬藺之兜です。
まるで後光が射したかのようなデザインの非常に目立つかぶとです。
「一ノ谷」の兜は多く見られますが、意味は源氏が平家に圧勝した「一ノ谷の戦い」での験を担いだ兜です。
「馬藺」の意味は、菖蒲の一種で生薬などにも使われた植物で、「菖蒲」と「勝負」とをかけて使用した物と思われます。
ちなみにこの兜は秀吉が1587年の九州攻めの褒美として蒲生氏郷の家臣西村重就から与えられた兜とされます。

変り兜 蟹爪脇立付 桃形筋兜

変り兜 蟹爪脇立付 桃形筋兜

桃形の美しい鉢に対し、天を衝いている大きな蟹の爪の脇立の「これでもか!」と云わんばかりの勢いとそのアンバランスに魅せられてこの兜を製作しました。
蟹の爪は木彫で関節部分まで細かく表現されています。
鉢は銅板を打ち出して線を付け、蟹の爪は木を彫刻して銀箔を押し荒々しさを表現しました。
錣は五段にしてあり、日根野錣で、毛引き威しをしてあります。

7号サイズ(手よりも小さいサイズ)の兜

このシリーズは本物仕様でどこまで小さく作ることが出来るかを挑戦して手がけた兜で、小さいからいって手を抜くことなく小金物細工の一つ一つ銅板を細工して作り上げました。
写真で見ると実在する兜と同じように見える程、詳細に忠実に製作した兜です。

阿古陀形 也前立 三十二間総筋兜

阿古陀形 也前立  三十二間総筋兜

伊達家家臣、白石宗実の兜で草書で「也」の字が付いています。
当時、文字を用いている前立を用いた武将には直江兼続もおり、山形県米沢市の宮坂考古館には梵字を用いた兜もあります。
「也」という文字を使用した理由はわからないが、戦場(いくさば)において、文字の前立はかなり目立った事に違いないと思われます。

等身大のサイズよりも大きな兜

最後に、等身大のサイズよりも大きな兜を紹介します。

阿古陀形 唐草総透し金物 三つ鍬形付 六十二間総星兜

阿古陀形 唐草総透し金物 三つ鍬形付 六十二間総星兜

鉢は真鍮を細長く切りだしたものを接ぎ合わせ極小星を一つずつかしめて制作しました。
鍬形台は銅版を唐草も王に彫金し切りだしたものを使い、眉庇、吹返しには銅版を唐草模様に彫金した細工を取り付けてあります。
前立にある中心の剣の部分の下部にも細かな彫金細工が施してあり、その上についている飾り金具にも彫金細工したものを切りだしたものです。

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