女の子の初正月に『羽子板』を贈る前に知っておきたい基礎知識
日本には古くから『初正月(はつしょうがつ)』に女の子には羽子板、男の子には破魔弓(はまゆみ)を贈る風習があります。
女の子に雛人形、男の子に五月人形を贈る『初節句(はつせっく)』は有名なのですが、この初正月の方は意外と知らない方が多いようです。
初正月とは生まれた赤ちゃんが初めて迎えるお正月のことで、数え年で言うと赤ちゃんが2歳になる誕生日です。
赤ちゃんがいるご家庭では「羽子板や破魔弓を飾ってお祝いする」と言うのが江戸時代から続く習わしなのです。
しかし、どうして女の子に羽子板を贈り、お正月に飾るようになったのでしょうか?
本記事では羽子板の意味や歴史、種類や選び方、羽子板はいつどこに飾り、誰が買うものなのかなどなど、羽子板を贈る前に知っておきたい基礎知識を全てご紹介します!
女の子の初正月の「羽子板飾り」は魔除けから始まり正月飾りへ
もともと羽子板は「羽根つき遊び」と共に生まれました。
羽根つきの原型は7世紀頃から宮中で行われていた『毬杖(ぎっちょう)遊び』だと言われますが、その頃は羽子板ではなく杖の先端がヘラ状になったものを使っていたようです。
羽子板の由来は『羽根つき』
現在のような形の羽子板が登場するのは室町時代です。
古い記録によると、当時の宮中では既にお正月に「羽根つき遊び」を行っていたそうです。
お正月に羽根つき遊びを行っていた理由は、年のはじめに羽根をつくことで「邪気を跳ね(羽根)除けて、今年も無病息災で元気にいられますように」と願ったからです。
昔は季節の変わり目には『鬼門(きもん)』が開いて、鬼(邪気)が出てくるため、病気になったり、飢饉(ききん)などの災厄が起こったりするとされたのです。
このように、当時の羽根つきはただの遊戯ではなく「邪気祓い(じゃきばらい)」や「厄除け」の意味がありました。年始には『胡鬼(こき)の子勝負』と呼ばれる「年占い」や「平和祈願」のための羽根つきも行われていたと言います。
羽根つきをしている時の音や、羽根を落としてしまった時に顔に塗られる墨(すみ)も「鬼(邪気)が嫌う」とされたので、羽根つきは邪気祓いに効果的だったのです。
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『羽根つきの道具』から『羽根つき飾り』へ
宮中では次第に、羽根つきに用いていた羽子板を「邪気祓い」や「厄除け」の意味でお正月に飾るようになります。これが『羽子板飾り』の誕生です。
その頃から、羽子板は縁起のよい「末広がり」の形をしていて、板面には松竹梅などの縁起のよい絵柄が描かれていたと言います。
昔は飢餓などの災厄が起こったり病気になったりするのは、全て「邪気(鬼)」のせいだと信じられていました。ですから、このような邪気祓いの儀式や、縁起物のお飾りなどが非常に大切とされたのです。
関連記事:「お正月の羽子板の基礎知識!意味は蚊除け?形はトンボに由来?」
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羽子板は「女の子の赤ちゃんのお守り」に
初めは宮中での「羽根つき道具」や「縁起物の正月飾り」であった羽子板は、次第に「女の子のお守り」の役割も持つようになります。
なぜなら、羽子板でつく羽根の先端の黒い玉には「無患子(むくろじ)」と言う名前の木の種子が使われているからです。その字の通り、そこには「子供が病気を患う(わずらう)ことの無いように」と言う親の願いが込められているのです。
羽根つきをしている時に羽根が宙を舞う姿が「トンボ」に似ていたから、と言う話もあります。トンボは感染症を運ぶ「蚊」を食べてくれるので、そこから「お正月に羽根つきをすると夏に蚊に刺されない」と信じられていたそうです。
なお、宮中で行われていた『胡鬼(こき)の子勝負』の『胡鬼』も、古代中国で「トンボ」を意味した言葉です。
こうして、羽子板は「子供の無病息災や健やかな成長を願うお守り」となり、生まれた赤ちゃんが初めて迎える『初正月(はつしょうがつ)』に贈ったり、飾ったりするようになりました。
羽子板が男の子ではなく「女の子のお守り」となった理由は、
・もともと羽根つき遊びは宮中の女性が行っていて、そこから女の子の遊びになったから
・男の子には『破魔弓(はまゆみ)』と言うお守りがあったから
などと言われています。
男の子の初正月に贈られる破魔弓も「魔除け」や「厄祓い」の意味が込められたお守りです。
関連記事:「破魔弓の意味は「魔除けと厄祓いのお守り」その歴史と由来を解説」
お正月飾りとして進化していく羽子板
羽根つきの道具として宮中で誕生した頃の羽子板は、板に直接絵を描く「描絵羽子板(かきえはごいた)」で、絵柄も松竹梅などシンプルなものでした。
その後「羽根つき用の羽子板」と「正月飾り用の羽子板」の2つに分かれ、貴族や武士の間で贈り合う風習が定着します。
そして、その風習が庶民の間に広まる江戸時代になると、特に飾り用の羽子板は素材も技巧も次第に豪華に、そして高度になっていきます。
多くの押絵を丁寧に板に貼りつけていく「押絵羽子板(おしえはごいた)」が生まれ、その絵柄も「歌舞伎」や「能狂言」などが採用され人気が高まります。
明治・大正時代には焼きゴテで線を描いた「焼き絵羽子板」や、絹を貼った羽子板に絵を描く「絹絵羽子板」などの羽子板も生まれ、更に種類が豊富になっていったのです。
関連記事:「羽子板は遊ぶ?飾る?お子様に教えてあげたい正月の羽根つき遊び」
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女の子の羽子板を飾る時期は「お正月だけ」ではありません
羽子板を飾る時期やしまう時期に厳密な決まりはないのですが、お住まいの地域やご家族によっては習わしや縁起などを気にされる方もいることでしょう。
初正月の羽子板を飾る時期と飾る場所
羽子板飾りを飾る時期ですが、お正月の準備をはじめる12月13日の『正月事始め』に飾りつけるのが古くから伝わる風習です。
忙しくて飾りつけが年の暮れになってしまった場合でも、29日(二重苦)や31日(一夜飾り)は縁起が悪いとされるので避けた方がよいでしょう。
羽子板を飾る場所は赤ちゃんが過ごす時間の多いリビングなどにすれば、女の子の初正月のお祝いをくださった方にも見ていただけますね。
ただ、羽子板は直射日光や湿気などに弱いので、窓際や水回りから少し離れた場所に飾るようにしましょう。
お正月が終わって羽子板をしまう時期は、1月15日の『小正月』前後とされますが、これは小正月には全国各地で『どんど焼き(左義長)』が行われるからです。
どんど焼きとは、その年のお正月に飾った門松やしめ縄、お守りなどを集めて燃やす古くからの火祭りです。
もし壊れてしまった羽子板がある場合は、この時に一緒に焚き上げてもらうとよいでしょう。
関連記事:「雛人形が役目を終えても捨ててはいけません!感謝を込めて供養するために」
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『節句飾り』と『年中飾り』
昔ながらの羽子板や破魔弓を飾る時期と言うのはありますが、縁起物ですからその時期を外して飾っても全く問題はありません。
特に、初正月の場合は少し早めに12月頭に飾りつけたり、お正月の月である1月下旬まで飾りっぱなしにする方も多いです。
おしゃれな羽子板を『年中飾り』として、お部屋のインテリアとして楽しむ方もいらっしゃいます。
関連記事:「正月飾りだけじゃない!おしゃれな羽子板はインテリアにも◎」
そして、3月3日には女の子の節句「桃の節句(上巳の節句)」があります。ですから、羽子板はお正月が終わっても片付けずに、ひな祭りの時期には雛人形と一緒に飾って華やかに初節句祝いをされることをおすすめします。
あまり知られていませんが、実は雛人形は9月9日の「重陽の節句(菊の節句)」にも飾ります。これは「後の雛(のちのひな)」と呼ばれ、長寿を願うと共に雛人形の虫干しをする行事です。
ひな祭りだけでなく、その際にもぜひ羽子板飾りを一緒に飾ってください。
関連記事:「羽子板は正月以外も飾れる『年中飾り』ひな祭りの雛人形と一緒に!」
女の子の羽子板はいつまで飾る?
「女の子の羽子板は何歳まで飾るのか」については、特に決まりはありません。
昔は『立志式(りっししき)』の年齢(数え年で15歳)まで飾るのが一般的でした。
羽子板を「子供が成長するまでのお守り」として飾るのなら、現代では女の子が成人を迎えるまでとなりますが、成人した後や結婚してからも羽子板を飾り続ける方もいらっしゃいます。
羽子板や破魔弓は赤ちゃんのお守りの役目を果たした後も、「縁起物のインテリア」としていつまでも飾っておいても全く問題はないのです。
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ピンクと薄ピンクの色合いが奥ゆかしさを表現し、ケースのバックの色がより羽子板を引き立たせています。手には扇を持ち福を招いたり、邪気を払ったりする意味合いがあります。
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女の子の初正月祝いのおすすめはケース入りの羽子板飾り
古くから羽子板や雛人形などの節句飾りは、赤ちゃんの母方の祖父母から贈られる風習があります。
羽子板はいつ誰が贈るもの?
現在でもその傾向は強いですが、父方の祖父母が購入したり、両家の実家で折半したり、両家がお節句の度に交代で負担したりと言うご家族も多いです。
祖父母からだけではなく、最近では叔父・叔母や親しいご友人から贈られたり、赤ちゃんのご両親が自分たちで選んで購入するケースも増えています。
赤ちゃんの初正月に飾るための羽子板飾りを贈る場合、飾りつけのことを考慮したら12月の初旬には相手の方に届いていた方がよいでしょう。
そのためには、羽子板の購入は11月中に済ませておくとよいと思います。
なぜなら、人形販売店では毎年11月の中旬頃には羽子板・破魔弓が店頭に並びはじめるのですが、人気のある商品はどんどん売れていってしまうからです。
羽子板・破魔弓は、雛人形や五月人形と同じく伝統工芸品で、職人さんがひとつひとつ手作りしているものが多いのです。
人気のデザインの羽子板や有名な職人が手掛けた破魔弓などはすぐに売り切れてしまうので、まだ商品の品揃えが豊富な11月のうちにお買い求めになることをおすすめします。
関連記事:「羽子板は「いつ」「誰が」買うのが良い?12月では遅すぎる?」
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羽子板はお子様のお守りだから「ひとりにひとつ」
「桃の節句」に飾る雛人形や「端午の節句」の五月人形もそうですが、「初正月」の羽子板や破魔弓も、赤ちゃん一人ひとりに贈られるものです。
なぜなら、これらは赤ちゃんにふりかかる病気や事故を身代わりに引き受けてくれる「お守り」だからです。
ですから、二番目、三番目のお子様が生まれた場合には共有せずに、それぞれの羽子板が必要になります。
スペースやご予算の問題がある場合でも、最近ではコンパクトで低価格の羽子板も販売されていますので、ぜひ女の子ひとりにひとつお守りを持たせてあげてください。
お母様の羽子板を娘に受け継がせたり、飾らなくなった羽子板を他の人に譲るのも、本来的な意味合いから考えるとよくないとされます。
たとえ飾らなくなっても、羽子板は捨てたりしないで感謝の気持ちを持って神社やお寺で供養していただきましょう。
関連記事:「雛人形の処分の方法は? 人形供養をご紹介します」
羽子板飾りの様々な種類
羽子板の種類は、ケースの有無や飾る方法、製法によって様々です。
羽子板をそのまま飾る「出し飾り羽子板」、ケースで保護されている「ケース飾り羽子板」があり、飾る方法によって「壁掛け」「卓上置き」タイプなどがあります。
製法も種類が多く「押絵羽子板(おしえはごいた)」、「木目込羽子板(きめこみはごいた)」、「プレス羽子板」、「描絵羽子板(かきえはごいた)」「焼絵羽子板(やきえはごいた)」などがあります。
東玉のネットショップで販売されている「羽子板飾り」は、すべて安全に配慮された「ケース飾り羽子板」の「押絵羽子板」です。
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関連記事:「羽子板の値段はいくら位?種類の違いや通販と実店舗での違いを解説」
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女の子に喜ばれるコンパクトな羽子板飾り
最近人気が高まっているのがコンパクトな羽子板飾りです。
飾る場所を選ばない省スペースな設計なので、子供部屋を与えられた時に自分の部屋に持っていけるのも嬉しいポイントです。
関連記事:「初正月の正月飾りに贈りたい!喜ばれる「羽子板」の選び方」
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大切な赤ちゃんの初正月のお祝いに贈る『羽子板飾り』。
女の子が健やかに美しく成長し、幸せな人生を送れるよう、素敵な羽子板を選んであげてください。
そして、いつか成長した女の子に、羽子板の由来やそこに込められた「今も昔も変わらない親から子への願い」を伝えてあげてください。
贈られた羽子板飾りが、後に女の子の宝物となりますように